交通事故に遭遇した場合には、様々な方法で、加害者側に対し、損害賠償請求を行うことができます。ここでは、3つの手続を紹介し、そのメリット・デメリットを簡単に説明したいと思います。
1 示談交渉
まず、どのような案件でも必ず行うのが、示談交渉です。
示談交渉とは、加害者本人または加害者側が加入している保険会社との間で、直接、交渉を行う手法です。
メリットとしては、本稿で紹介する3つの手法の中で、最も迅速に解決ができるという点が挙げられます。
他方、デメリットとしては、弁護士費用や遅延損害金についての支払いが見込めない点が挙げられます。また、損害賠償には3つの基準がありますが、保険会社やその担当者によっては、示談交渉段階では裁判基準に基づく賠償案には応じないという場合があります。
2 訴訟(裁判)
次に、最もポピュラーな解決方法として、訴訟(裁判)があります。
メリットとしては、弁護士費用や遅延損害金について支払いが見込める点や、裁判基準に基づく解決が実現できるという点が挙げられます。
他方、デメリットとしては、3つの手法の中で、最も時間がかかるという点が挙げられます。
3 示談交渉と訴訟を選ぶ基準
まず、一つの基準としては、早期解決を望むかどうかです。訴訟の場合には、訴訟提起から解決までに短くとも半年程度はかかりますので、何らかの事情で、賠償金の受領を急ぐ場合には、示談交渉での解決を目指すことになります。
他方で、最も高い賠償額を獲得するという観点から見ると、一般的には訴訟を選択することになります。ただ、全ての案件で、訴訟を選択するのがよいかというと、必ずしもそうとは限りません。
訴訟というのは、証拠が全てです。争点となっている事実について、被害者側の証拠が薄い場合には、訴訟を選択したとしても望む結果は得られません。また、訴訟となれば、加害者側も、示談交渉段階で譲歩していた争点を含む全ての争点について厳しく主張立証を展開するため、結果として、賠償額が示談段階よりも下がってしまう場合もあります。
示談交渉段階で提示された金額で満足するか、訴訟に踏み切り増額を目指すか。
正しい選択をするためには、交通事故案件について十分な経験と実績がある弁護士に依頼することが不可欠であると言えます。
4 ADR(裁判外紛争処理手続)
最後に、ADR(裁判外紛争処理手続)についても、簡単に紹介しておきたいと思います。
まず、ADRのイメージですが、ADRも、裁判と同様に、申立て→審理→話合い→判断という4つの段階を経ますので、裁判と似たようなものだと思っていただいて結構です。
また、ADRを行っている機関はいくつかあるのですが、有名どころでは、日弁連交通事故相談センターや、交通事故紛争処理センターなどがあります。いずれも、担当するのは、当該センターから委嘱を受けた弁護士です。
手続は、上記のように4つの段階を踏んでいくことになりますが、話し合いがまとまらなかった場合には、審査意見や裁定といった最終判断が下されます。この最終判断について、被害者側は不服があればこれに従うことを拒否することができますが、保険会社や共済組合は事実上拘束されことになっています。
メリットとしては、訴訟よりも短期間で解決ができる点、裁判所基準に基づく合意ができる点などが挙げられます。
他方、デメリットとしては、手続要件とも言えますが、事実関係に大きな争いがある場合には利用できないなど、利用できる場合が限られている点が挙げられます。また、弁護士費用や遅延損害金が認められない場合が多いという点も挙げられます。
以上、3つの解決方法をご紹介しましたが、いずれの道を選択するにも、交通事故案件に精通した弁護士に依頼することが最も重要です。