後遺症① 脳損傷(高次脳機能障害)

高次脳機能障害とは、病気や事故などの様々な原因で脳が損傷されたために、言語・思考・記憶・行為・学習・注意などに障害が起きた状態をいいます。

事故により、頭部を打撲し、その結果、硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳挫傷、脳内出血、びまん性軸索損傷などの診断を受けた場合には、今後、高次脳機能障害を発症する可能性があります。ただ、専門医でも発見が困難な場合がありますので、上記のような診断を受けていない場合でも注意が必要です。

症状は、脳の損傷部位により様々ですが、概ね以下のようなものが挙げられます。

 

① 記憶障害

受傷後、新しい情報やエピソードを覚えることができなくなる(学習障害も含む)。
物の置き場所をすぐに忘れる。忘れることを何度も繰り返す。
受傷前の記憶の喪失。以前出来ていた仕事ができなくなる。手順が覚えられない。
実際に体験していないことを体験したかのように話をする(作話)。
日付や時間、季節、場所がわからなくなる。人が分からず間違える。(失見当識)

 

② 注意障害

注意が散漫になる。注意が持続できず、15分と集中がもたない。
学業や仕事の成績が低下する。ケアレスミスを繰り返し何度も叱責を受ける。
半側空間無視。主に右半球の脳血管障害後に発症する。
正面を向いている場合に左側から声をかけても気づかず右側を探す。
食事を摂る際、左側の皿に手を付けない。茶碗の中の右半分だけを食べる。

 

③ 遂行機能障害

目的や計画を立て、それに向かって行動することができなくなる。
成り行き任せで衝動的な行動になりやすい。行き当たりばったり。
目標を設定できないため行動の開始が困難になり、活動的でなくなる。
仮に計画をたてることが出来ても、計画通りに物事をすすめることが出来ない。
手順や道順の失敗を繰り返す。

 

④ 社会的行動障害

意欲や発動性が低下する。運動障害がないのに一日中ベッドから離れず引きこもる。
よく怒る。一度イライライし始めるとコントロールができなくなる。
突然興奮して大声で怒鳴り散らす。暴力や性的行為など反社会的な行動が見られる。
話をしていると急に話題が変わる。関係性から過剰と取れる親密的な言動をする。
皮肉や冗談が理解できなくなる。文字通りにしか物事を受け取れなくなる。
相手の気持や立場を思いやることが出来ず、人間関係にトラブルが生じる。
依存的な生活をおくる。すぐ他人を頼る。子どもっぽくなる。
一つの物事に固執し、他のことが出来ない。

 

以上のような症状が認められる場合には、高次脳機能障害の存在が疑われますので、脳のCTやMRIを撮影するなど緻密な検査が必要になります。また、本人に障害の認識がないことが多いので、家族としても本人の言動を継続的に注意深く見守る必要があります。
 
そして、高次脳機能障害である場合には、後遺障害等級の認定を受けることが出来ます。

認定されうる等級としては、別表第一1級1号、2級1号、別表第二3級3号、5級2号、7級4号、9級10号などです。

高次脳機能障害について後遺障害等級が認定されるためには、以下の3つの要素が重要になります。なお、これらは、重要な判断要素ですが、あくまでも要素に過ぎませんので、いずれか一方が欠けていても、後遺障害が認定される場合があります。

  1. 事故直後において意識障害があったこと
  2. 画像上、脳損傷が認められること
     

まず、①事故直後において意識障害があったことが重要な判断要素となります。

多くの場合、意識障害の有無は、事故直後の救急搬送時や、救急搬送後の初診時に確認されます。ただし、搬送先の病院に脳外科がない場合や、頭部以外の受傷が顕著な場合には、脳への影響について確認が疎かになるケースがありますので、家族としても注意が必要です。

具体的に必要とされる検査数値を紹介すると、JCS(刺激への反応)の値が3桁、GCS(動作や言語反応)の値が8点以下の状態が、6時間以上継続すること。また、JCSの値が1桁ないし2桁、GCSの値が13~14点であり、意識障害が比較的軽度であっても、その状態が1週間以上続くことが必要とされます。これらの場合には、脳損傷の存在が推認されます。

なお、頭部打撲があっても、上記のいずれにも該当しない場合や、そもそも意識障害が全くない場合、一時的なもので直ぐに回復する場合もあります。ただ、そういった場合でも、脳損傷が認められる場合がありますので、必ずしも安心できません。必ず頭部のCTとMRIを撮影し、その後の経過についても慎重に見守る必要があります。

また、被害者が若年の場合には、はっきり意思表明できないため、意識障害があるにもかかわらず、その発見が見過ごされるケースもあります。また、被害者が高次脳機能障害になっていたとしても、被害者自身はあまり自覚がないことが多く、運動機能の低下などもないため、周りの人間でも注意していなければ後遺障害の存在に気が付かない場合があります。被害者が若年の場合にはこの傾向はより一層強いので、家族が被害者本人の様子を継続的に注視している必要があります。

次に、②画像上、脳損傷が認められることが必要になります。3要素の中で最も重視されます。

前提として、脳損傷は大きく分けて2つあります。一つは、局在性脳損傷といって、脳の局部が損傷してその部位の機能障害が生じる場合です。画像から比較的容易に発見できます、もう一つは、びまん性軸索損傷(びまん性脳損傷)といいます。これは、特定の部位が損傷しているわけではなく、幅広い領域で損傷が生じている場合です。局在性脳損傷よりも発見が困難な場合が多いといえます。びまん性軸索損傷の場合には、直後の画像では脳損傷を確認できないことが多いですが、その後経過観察を続け、3か月以内に脳室拡大及び脳萎縮が生じている場合には、脳損傷の存在が強く疑われます。

これら脳損傷を発見するためには、レントゲン、CT、MRIなどの撮影を受け、撮影された画像を分析することが重要になります。この3つは必須です。なお、医療機器の進歩はめざましく、過去の検査機器では発見できなかった脳損傷が最新の機器を用いることで明らかになるというケースが増えています。特に、MRI撮影を受ける際には、3テスラ以上のMRIで撮影されることを強くおすすめします。

また、CTやMRI等によっても脳損傷が確認できないケースであっても、事故後の意識障害があったり、現に高次脳機能障害の症状が見られる場合があります。そういった場合には、PETやSPECTといった脳内の血流量や脳内の活動状況を調査する検査機器を用いることで、脳の異常が発見される場合があります。これらのみでは認定を獲得するのは難しいですが、他の検査結果等と合わせることで認定を獲得できる可能性があります。

さらに、上記のように、事故直後のMRI等では脳損傷が発見できず、目立った症状もなかったにもかかわらず、時間を経る毎に徐々に症状が発現し、数年後に明白な状態になるというケースもあります。こういったケースで重要なのは、異常がなくとも、定期的にMRIを撮影し、経過観察を怠らないということです。また、定期的にMRIを撮影することで、医療記録を医療機関に保管してもらうことも重要です。少し費用はかかりますが、MRIを撮影した場合には、画像データをCDなどで受領し、保管しておくのが良いといえます。
 
これらの要素を立証する証拠は様々ですが、最も重要なのは、CTやMRI画像です。

これらに加えて、家族作成の「日常生活状況報告書」や、主治医作成の「神経系統の障害に関する医学的意見」「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」「頭部外傷後の意識障害についての所見」の他、知能検査(WAIS:ウェイクラー成人知能検査)や記憶検査(WMS:日本版ウェイクスラー記憶検査)など各種神経心理学的検査の検査結果なども重要な証拠となります。

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