休業損害について

交通事故に遭遇し、怪我をすると、病院に通院することになります。怪我の程度が酷い場合には、会社や家事育児を休んで自宅で療養しなければならない場合や、時には、入院を強いられる場合もあります。

そして、病院の入通院や療養のためには、会社を休まざるを得ず、その結果、収入が減少し、あるいは、有給休暇を失うことがあります。自営業者であれば、仕事を休んだことで利益が減り、あるいは、代わりの者を雇用したことで予期せぬ支出を強いられることもあります。また、専業主婦(主夫)の場合でも、家事育児ができず、他の親族や友人の助けを借りることもあるでしょう。

こういった場合には、事故に遭遇しなければ、あなたが得られたはずの給与や利益(いわゆる休業損害)について、加害者側に賠償を求めることができます。

具体的には、休業により失った額が分かる場合にはその額について、その額が判明しない場合には、「基礎収入日額×休業日数」という計算式によって算出される額について、賠償を求めることができます。

 

1 休業日数

まず、休業日数については、原則として、症状固定日までの間に、現実に休んだ日数を前提とします。

ただ、症状の内容や程度、治療経過等から就労可能であったと認められる場合には、現実に休業していても賠償の対象にならないことや、一定の割合に制限されることがあります。

例えば、手足の擦り傷などに止まる場合に、1カ月間、仕事を休んだとしても、全期間について休業の必要があったとはいえず、せいぜい、1日か2日の休業日数となります。

また、むち打ちなどの場合でも、時間の経過とともに徐々に回復していき、休業の必要性が低下すると考えられていますので、休業損害も一部に制限されることがあります。

なお、休業日数を立証するための証拠としては、給与所得者の場合には、休業損害証明書が必須になります。これは、勤務先に作成してもらうことになります。

他方、自営業者や専業主婦(主夫)の場合には、診療報酬明細書などの通院履歴に関する証拠、療養中の症状の推移を書いた日記、第三者の証言などが証拠になります。

 

2 基礎収入

次に、基礎収入については、業種ごとに算定方法が異なりますので、以下、給与所得者、事業所得者、会社役員、専業主婦の3つに分けて説明します。

 

① 給与所得者の場合

まず、給与所得者の基礎収入は、事故前、3カ月間の平均収入によって算出します。時季により変動が大きい職種の場合には、より長期間の平均収入を用いることもあります。

証拠としては、休業損害証明書、給与明細書、源泉徴収票などがあります。

なお、休業したことで、賞与が減額となった場合や、昇給の機会が遅れたような場合についても、「基礎収入日額×休業日数」という計算式では把握できないものの損害が発生していることは疑いないので、別途、休業損害として賠償を求めることができます。
 
また、原則として、休業により現実に収入源が認められなければ、休業損害は認められませんが、入通院や療養のため有給休暇を用いた場合には、その日数に応じて休業損害が認められます。

 

② 事業所得者(自営業)の場合

次に、事業所得者の場合には、原則として、確定申告所得額を基礎とします。また、青色申告の場合には、確定申告所得額に青色申告特別控除額を足した金額を基礎とします。

さらに、減価償却費や事業所の地代家賃、損害保険料など、休業中も支出を免れることができない固定経費があれば、それらも加算することができます。その他にも、専従者がいる場合には、適宜修正が必要になります。

証拠としては、税務署の収受印のある確定申告書、確定申告書の付属書類(収支内訳書又は青色申告決算書)、課税証明書(=所得証明書)などがあります。

 

③ 会社役員の場合

会社役員の場合には、役員報酬のうち、労務対価部分を基礎とします。

役員報酬には、労務対価部分のほかに、役員として受領する利益配当部分があると考えられていますが、利益配当部分は休業によっても失われないので、除外されます。

労務対価部分の算定に当たっては、会社の規模(同族会社か否か)、利益状況、当該役員の地位・職務内容、他の役員の報酬額・従業員の給与額などが参考にされます。

証拠としては、②事業所得者で述べたもののほかに、当該会社の法人税の確定申告書、総勘定元帳、給料台帳などがあります。

 

④ 主婦(主夫)業の場合

最後に、主婦(主夫)業の場合には、賃金センサスを用いて、基礎収入を認定します。

賃金センサスとは、全国民の平均賃金を統計にしたもので、毎年、厚労省から発表されています。例えば、平成27年度の賃金センサスを用いると、専業主婦の基礎収入は、372万7100円となります。

また、仕事をしながら、家事育児も行っているという場合には、就業による収入額と賃金センサスとを比較し、いずれか高い方を基礎収入として用います。

 

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