交通事故に遭遇すると病院で治療を受けることになりますが、時として、治療に専念したものの、身体に事故の影響が残ってしまう場合があります。このように、治療終了後もなお身体に残存する症状のことを後遺症といいます。
後遺症がある場合には、一定の条件を満たすことで、後遺障害として認定を受けることができますが、認定を受けるまでには複雑な手続と、多くの注意点がありますので、以下に概要を記載します。
なお、当事務所では、後遺障害等級の獲得を大切にしています。後遺症に苦しむ交通事故被害者にとって、後遺障害等級を獲得することで得られる追加の賠償金は、事故後、数年あるいは数十年に渡り後遺症と付き合っていくための経済的基盤となるからです。
後遺障害認定を受けるまでの大まかな流れを説明します。
- まず、事故後は、病院に入通院し、治療(リハビリを含みます)を受けます。
- 治療開始後、ある程度の期間が経過すると、これ以上症状が良くならないという状態、すなわち症状固定になります。
- 症状固定になると、次に、主治医に後遺障害診断書を作成していただきます。
- その他にも後遺障害を立証するための資料を集め、資料が集まったら、自賠責保険会社を通じて、損害保険料算出機構というところに、後遺症認定の申請を行います。
- 申請後、概ね1か月から2か月程度で、結果が届きますので、届いたら認定内容を精査し、不服があれば、不服申立ての手続を行うことになります。
- 不服申立てを行わない場合には、後遺障害等級が確定しますので、等級に応じて、保険会社との間で賠償交渉を開始します。
以上が、後遺障害認定を受けるまでの大まかな流れになります。
次に、以上の6つのステップ毎に、注意すべき点の概要を書いていきたいと思います。
なお、抱えている疾患や事故の内容は様々ですし、ここでは伝えきれないことがたくさんありますので、詳細は無料相談の際に説明させてください。
① 治療段階
まず、事故に遭遇した場合には、できれば当日、遅くとも翌日には整形外科(必要に応じて、脳神経外科、外科、形成外科など)を受診してください。
初診時には、その時点での身体の異常を、余すところなく、全て、医師に伝えてください。再診時も同様に、診察の度に、身体の異常を全て、医師に伝えてください。強がることなく、少しでも違和感があれば、全て伝えてください。痛みだけでなく、痺れ、知覚の鈍麻(触ってるのに何も感じない)、関節の可動域制限、張り、コリ、筋力の低下など、違和感は人それぞれです。
通院の頻度は、抱えている疾患によって様々ですが、主治医としっかり相談して決めてください。できれば、週3日から4日が望ましいといえます。仕事を再開することも視野に入れて、仕事を続けながらでも、しっかり通院できる病院を選んでください。
また、できれば早い段階で一度、MRI(3テスラ以上のものが望ましい)を撮影してください。
なお、整骨院や接骨院、鍼灸院などで施術を受ける場合は、予め、医師と相談してください。また、相談の結果、施術を受けることになった場合でも、あくまでも、整形外科での治療(リハビリを含みます)をメインにしてください。
② 症状固定段階
症状固定に至っているかどうかの判断は、主治医の意見がとても重要になります。そして、主治医は、患者の自覚症状を重要な判断材料とします。通院の度に、症状に改善傾向が見られるのであれば、症状固定ではありません。あなたが感じる身体の変化を、しっかり主治医に伝えてください。
通院期間も非常に重要な要素になります。抱えている疾患によって様々ですが、少なくとも半年程度は通院した方が良いでしょう。
③ 後遺障害診断書
非常に重要な資料ですが、多くの医師は、その記載方法を知りません。
また、前提として、どのような検査をすべきかについても、知らない場合が多いです。
予め患者の方から、こういう検査をして欲しいと伝え、かつ、検査結果の記載方法を具体例を示して伝える必要があります。
そして、ここでは、医師とのコミュニケーションが重要になります。当事務所では、必要に応じ、主治医に宛てたお手紙、主治医との面談を行います。
④ 後遺症認定の申請(後遺障害等級認定の申請)
申請には2つの方法があります。一つは、加害者側の保険会社に申請手続を任せる、事前認定です。もう一つは、自ら自賠責保険会社を通じて行う、被害者請求です。当然、被害者請求の方が望ましいといえます。
申請にあたっては、標準資料だけでなく、後遺障害を立証するための様々な資料を提出します。主治医に協力を依頼して作成していただくものもあれば、事故当時の写真や陳述書など被害者自ら作成収集すべきものもあります。
⑤ 不服申立て
不服申立ての方法はいくつかありますが、最も多く使われているのは、自賠責に対する異議申立てです。異議申立てによって当初の認定結果を覆すためには、高いハードルがありますが、当初の申請を事前認定で行っており、弁護士のアドバイスを受けていないようなケースでは結論が変わる可能性も十分あります。
異議申立ての他には、自賠責紛争処理機構に対する申請や裁判などがあります。
以上が、後遺症認定手続における注意点です。
後遺障害等級の認定を受けることは、非常に重要です。ただ、専門性が高いため、適切な後遺障害等級を獲得するためには、事故直後から、交通事故分野に精通した弁護士に相談することが必須です。