交通事故の後遺症の一つとして、醜状障害があります。
この障害は、体表面のうち日常露出する部分に、瘢痕や陥没、線状痕などの傷跡(醜状痕)が残る障害で、バイクや自転車などの二輪の運転者、歩行者などが被害者となる交通事故に多く見られます。
日常露出する部分、特に、頭部や顔面部、頸部(いわゆる外貌)に醜状痕が残ることは、被害者にとって大きな精神的苦痛を伴います。また、醜状痕が残ることで、対人関係に支障が生じ、接客業などに従事することが困難になる場合もあります。
そのため、日常露出する部分に醜状痕が残る場合には、一定の条件の下で、醜状障害として後遺障害認定を受けることが出来ます。
醜状障害は、醜状のある部位に着目して、大きく、
①外貌(頭部、顔面部、頸部など)の醜状痕と、
②上肢・下肢の醜状痕とに分けて考えられています。
その上で、①外貌の醜状痕の場合には、醜状痕の大きさによって、さらに細かく等級が分かれています。
例えば、顔の頬や顎のあたりに、鶏の卵よりも大きい醜状痕が残った場合には、「外貌に著しい醜状を残すもの」として、後遺障害等級7級の認定を受けることが出来ます。なお、7級の認定を受けた場合には、弁護士介入後の裁判基準によると、後遺障害慰謝料として約1030万円の賠償金を請求することができます。
また、膝から脛にかけて、手のひら程の大きさの醜状痕が残った場合には、「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」として、後遺障害等級14級の認定を受けることが出来ます。なお、14級の認定を受けた場合には、裁判基準によると、後遺障害慰謝料として約110万円の賠償金を請求することが出来ます。
このように、醜状障害については、醜状痕の位置や大きさに応じて、等級認定を受けることができ、等級に応じた慰謝料を請求することが出来ます。
また、醜状障害の場合でも、一定の場合には、労働能力の喪失が認められ、逸失利益の賠償請求が認められます。
かつては、醜状障害については、関節の可動域制限や神経症状のように身体機能そのものを低下させないとして、労働能力の喪失はなく、逸失利益もないと考えられていました。
しかし、醜状障害でも、被害者によって、性別、年齢、職業、醜状痕の位置、醜状痕の大小など様々です。
例えば、工場内で技術職として働く人が、足の脛に手のひらほどの大きさの醜状痕を負った場合と、飲食店で接客業に従事していた人が、首の露出する部分に手のひらほどの大きさの醜状痕を負った場合とでは、労働能力への影響は全く異なります。
醜状障害の場合には、労働能力の喪失・逸失利益の有無が裁判の大きな争点となることがありますが、醜状痕が労働能力(あるいは労働の機会)に与える影響を丁寧に主張立証していくことが重要と言えます。